
介護サービスを受けるにはどうすればいいでしょうか?|伊勢の訪問看護「ゆう」
「最近、親の足腰がずいぶん弱ってきた気がする」
「退院の許可は出たけれど、家に帰ってからの生活がどうにも心配」
介護のことを考え始めるきっかけは、多くの場合、ある日突然やってきます。そしていざ調べ始めてみると、要介護認定、ケアプラン、地域包括支援センター……と聞き慣れない言葉が次々に出てきて、いったい何から手をつければよいのか分からなくなってしまう。私たちが日々ご相談をお受けするなかでも、本当によくお聞きするお悩みです。
ただ、実際のところ、介護サービスを使い始めるまでの道のりは、順番さえ分かってしまえば、それほど複雑なものではありません。そして何より、その道のりをひとりで歩く必要はありません。要所要所で専門職が伴走してくれる仕組みが、きちんと用意されています。
この記事では、伊勢で訪問看護とケアマネジャー事業所(居宅介護支援事業所)を運営している私たち「ゆう」が、最初のご相談からサービス利用開始までの流れを、順を追って丁寧にご説明します。少し長くなりますが、この記事をひととおりお読みいただければ、全体の流れと「まず何をすればよいか」がお分かりいただけるはずです。
1. 介護サービスを利用できるのはどんな人?
介護保険のサービスは、残念ながら「申し込めばその日から使える」というものではありません。年齢と、心身の状態についての条件が定められています。まずはここから確認していきましょう。
1-1. 年齢による条件
65歳以上の方(第1号被保険者)は、介護が必要になった原因を問わず、市町村から「介護や支援が必要な状態」と認定されれば、介護保険のサービスを利用できます。転倒による骨折でも、認知症でも、加齢による体力の低下でも、原因は問われません。
40歳から64歳までの方(第2号被保険者)は、少し条件が絞られます。国が定める16種類の「特定疾病」が原因で介護が必要になった場合に限り、介護保険のサービスを利用できます。特定疾病には、たとえば次のような病気が含まれます。
- 脳血管疾患(脳梗塞・脳出血など)
- 関節リウマチ
- 初老期における認知症(いわゆる若年性認知症)
- パーキンソン病関連疾患
- がんの末期
たとえば50代で脳梗塞を起こし、後遺症で身体に麻痺が残った方は、65歳前であっても介護保険のサービスを利用できる可能性があります。「まだ介護保険の年齢ではないから」と諦めてしまう前に、一度ご相談いただきたいところです。
一方で、40〜64歳の方でも、特定疾病以外の原因——たとえば交通事故によるけが——で介護が必要になった場合は、介護保険の対象にはなりません。その場合は障害福祉サービスなど別の制度が使えることがありますので、これもやはり、窓口で相談してみることが第一歩になります。
1-2. 保険料はすでに納めています
介護保険料は、40歳になった月から健康保険料と合わせて納めることになっており、65歳以降は原則として年金からの天引きに切り替わります。つまり、40歳以上の方はみなさん、すでに介護保険の「加入者」なのです。
介護保険は、いざというときのためにみんなで保険料を出し合って支える制度です。「人様のお世話になるのは申し訳ない」とおっしゃる方が本当に多いのですが、長年保険料を納めてきたのですから、必要になったときには遠慮なく使っていただきたい。それがこの制度の本来の姿だと、私たちは考えています。
1-3. こんな様子が見られたら、相談のタイミングです
「介護が必要な状態」といっても、寝たきりの状態だけを指すわけではありません。次のような様子に心当たりがあれば、それはご相談のタイミングです。
- 歩くとふらつく、家の中でつまずいたり転んだりすることが増えた
- 着替えや入浴、トイレに手助けが必要になってきた
- 物忘れが目立ち、鍋を焦がす、同じ物を何度も買ってくる、薬の飲み忘れが続く
- 入院で体力が落ち、退院後にひとりで生活できるか不安がある
- 遠方に住む親のもとをたまに訪ねると、家の中が荒れてきている
「まだ介護というほどのことでは……」と迷われる段階でまったく構いません。むしろ早めにご相談いただいたほうが、軽い支援で済むうちに手を打てて、その後の選択肢も広がります。介護は、深刻になってから慌てて始めるより、少し早めに備えるほうがずっと楽なのです。
2. 利用開始までの流れ
それでは、実際にサービスを使い始めるまでの手順を、順番にご説明します。大きく分けると「相談 → 申請 → 調査 → 認定 → ケアプラン作成 → 利用開始」という流れになります。
2-1. まずは相談窓口へ
最初の相談先としておすすめしたいのは、お住まいの地域の地域包括支援センターです。
地域包括支援センターは、高齢者の暮らし全般についての相談を無料で受けてくれる公的な窓口で、保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーといった専門職が配置されています。伊勢市内にも日常生活圏域ごとに設置されていますので、「うちの地区の担当センターはどこだろう?」という段階でしたら、市役所の介護保険担当窓口に問い合わせれば教えてもらえます。
相談の内容は、まとまっていなくて大丈夫です。「何をどう聞いたらいいのかも分からない」という状態のままお越しいただいて構いません。今の生活の様子や困りごとをお話しいただければ、専門職が状況を整理し、次にすべきことを一緒に考えてくれます。
また、すでに気になる居宅介護支援事業所(ケアマネジャーの事業所)がある場合や、入院中で病院に相談員(医療ソーシャルワーカー)がいる場合は、そちらに相談していただいても大丈夫です。入り口はどこであっても、必要な手続きにつながるようになっています。
2-2. 要介護認定を申請する
介護保険のサービスを使うには、「どのくらい介護が必要な状態か」を市町村に認定してもらう必要があります。これが要介護認定です。
申請の窓口は、お住まいの市町村の介護保険担当課です。申請の際には、おおむね次のものが必要になります(市町村によって多少異なりますので、事前にご確認ください)。
- 要介護認定の申請書(窓口またはホームページで入手できます)
- 介護保険被保険者証(65歳になると交付されています)
- 40〜64歳の方は医療保険の保険証
- マイナンバーの分かるもの、本人確認書類
「本人も家族も、平日に窓口へ行く時間がない」という場合もご安心ください。申請は、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所が無料で代行できます。実際、ご家族に代わって私たちのような事業所が申請をお手伝いするケースはとても多いです。申請そのものに費用は一切かかりません。
2-3. 認定調査と主治医意見書
申請をすると、後日、市の認定調査員がご自宅(入院中の場合は病院)を訪ね、普段の生活の様子について聞き取り調査を行います。歩行や立ち上がりはどうか、食事や入浴、排泄はご自身でできるか、物忘れの程度はどうか、といった全国共通の項目に沿って確認していく、およそ1時間ほどの調査です。
このとき、ぜひ覚えておいていただきたい大切なことがひとつあります。それは、普段の様子をありのまま伝えるということです。
調査の日に限ってご本人が張り切ってしまい、普段はできないことまで「できます」と答えて、実際より元気に見えてしまった——という話は、決して珍しくありません。認定結果が実態より軽く出てしまうと、必要なサービスが十分に使えなくなってしまいます。日頃困っていることや、調子の悪い日の様子は、ご家族からも具体的に伝えてください。事前に、困りごとをメモに書き出して調査員にお渡しするのも良い方法です。
認定調査と並行して、かかりつけ医(主治医)が、心身の状態について主治医意見書を作成します。作成の依頼は市町村から医師へ直接行われますので、ご自身で書類を取りに行く必要はありませんが、かかりつけ医がいない場合は市町村が指定する医師の診察を受けることになります。日頃から何でも相談できるかかりつけ医を持っておくことは、こういう場面でも大切になってきます。
2-4. 認定結果の通知
認定調査の結果と主治医意見書をもとに、まずコンピュータによる一次判定が行われ、続いて保健・医療・福祉の専門家で構成される介護認定審査会が審査を行います。結果は、原則として申請から30日以内に郵送で届きます。
認定は、介護の必要度が軽い順に要支援1・2、要介護1〜5の7段階に分かれています。この区分によって、利用できるサービスの種類と、介護保険が使える月々の上限額(支給限度額)が決まります。なお、審査の結果「非該当(自立)」と判定される場合もありますが、その場合でも市町村の介護予防事業など、利用できるサービスがありますので、あわせて窓口でご確認ください。
認定結果に納得がいかない場合は、不服申し立てや、状態に合わせた区分変更の申請という道もあります。「思ったより軽く出てしまった」というときも、そこで諦めずにケアマネジャーや地域包括支援センターへご相談ください。
2-5. ケアプランを作る
認定が出たら、いよいよ「どのサービスを、どのくらい、どう組み合わせて使うか」という計画——ケアプランを作ります。要介護1〜5の方は居宅介護支援事業所のケアマネジャーが、要支援1・2の方は主に地域包括支援センターが担当します。
ここでひとつ、意外と知られていない大切なことをお伝えします。ケアプランの作成に、自己負担は一切かかりません。ケアマネジャーへの報酬は全額介護保険から支払われますので、何度相談しても、プランを何度作り直しても、利用者さんの負担はゼロです。ですから、どうぞ遠慮なく、納得がいくまで相談なさってください。
ケアプランを作る際、ケアマネジャーはご本人の心身の状態だけでなく、ご家族の事情も含めて計画を立てます。
- 「日中は仕事があって、家を空けざるを得ない」
- 「介護で腰を痛めてしまい、入浴の介助がつらくなってきた」
- 「介護のために離職すべきか悩んでいる」
こうした事情こそ、遠慮せずお話しください。介護は長く続くものです。ご家族が無理なく続けられる形を整えることが、回り回ってご本人の穏やかな暮らしを守ることにつながります。「家族が頑張ればなんとかなるので」と我慢を重ねた結果、共倒れになってしまっては元も子もありません。
3. 費用はどのくらいかかる?
サービスを検討するうえで、やはり気になるのは費用のことだと思います。ここは少し丁寧にご説明します。
3-1. 自己負担は原則1割
介護保険が適用されるサービスは、かかった費用の1割(一定以上の所得がある方は2割または3割)が自己負担です。
たとえば1回3,000円の訪問介護サービスを利用した場合、1割負担の方の支払いは300円、2割負担の方は600円、3割負担の方は900円ということになります。ご自身の負担割合は、認定後に交付される「介護保険負担割合証」で確認できます。
3-2. 月々の支給限度額
要介護度ごとに、介護保険が使える月々の上限額(支給限度額)が定められています。金額は要支援1でおよそ5万円、最も重い要介護5ではおよそ36万円と、介護の必要度が高いほど多くのサービスを保険で利用できる仕組みです(金額は改定されることがありますので、正確な額は最新の情報をご確認ください)。
この限度額の範囲内であれば、自己負担は1〜3割で済みます。限度額を超えてサービスを利用した場合、超えた分は全額自己負担となりますが、実際には、限度額の中に収まるようケアマネジャーが計画を調整するのが一般的です。
3-3. 負担を軽くする制度もあります
ひと月の自己負担の合計が一定額を超えた場合には、超えた分があとから払い戻される高額介護サービス費という制度があります。また、所得の低い方には、施設利用時の食費・居住費が軽減される制度や、社会福祉法人等による負担軽減制度など、いくつもの支えが用意されています。
「お金が心配だから、サービスを減らそうか……」と悩む前に、まずはケアマネジャーにその心配をそのままお話しください。使える制度は、皆さんが思っていらっしゃるより意外とあるものです。
4. 介護サービスにはどんな種類がある?
介護保険で利用できるサービスは多岐にわたります。ここでは代表的なものを、「自宅で受ける」「通って受ける」「泊まる・入所する」に分けてご紹介します。
4-1. 自宅で受けるサービス
訪問介護(ホームヘルプ)は、介護福祉士やホームヘルパーがご自宅を訪ね、入浴・排泄・食事の介助といった身体介護や、掃除・洗濯・調理などの生活援助を行うサービスです。「住み慣れた家で暮らし続けたい」という願いを、日々の暮らしの面から支えます。
訪問看護は、看護師がご自宅に伺い、主治医の指示のもとで医療的なケアを行うサービスです。内容は幅広く、たとえば次のようなことを行います。
- 血圧・体温などの測定と健康状態の観察
- 点滴や注射、たん吸引などの医療処置
- 床ずれ(褥瘡)の予防と処置
- 薬の飲み忘れ・飲み間違いを防ぐ服薬管理
- 主治医との連絡・調整
- ご家族への介護方法のアドバイスや、療養上のご相談
「病院にいた頃の安心を、自宅でも」というイメージが近いかもしれません。糖尿病でインスリン注射が欠かせない方、退院直後で体調が安定しない方、がんの療養をご自宅で続けたい方など、持病を抱えながらの在宅生活には特に心強い選択肢です。
訪問リハビリテーションでは、理学療法士や作業療法士がご自宅に伺い、その方の生活環境に合わせたリハビリを行います。
4-2. 通って受けるサービス
デイサービス(通所介護)は、日中、施設に通って入浴や食事、機能訓練、レクリエーションなどを受けるサービスです。家に閉じこもりがちな方にとっては貴重な外出と交流の機会になりますし、ご家族にとっては、介護から離れてほっとひと息つける時間にもなります。
デイケア(通所リハビリテーション)は、介護老人保健施設や病院・診療所に通い、理学療法士などの専門職によるリハビリテーションを受けるサービスです。「歩く力を取り戻したい」「退院後の機能回復を続けたい」という方に向いています。
4-3. 泊まる・入所するサービス
ショートステイ(短期入所生活介護など)は、数日から1週間程度、施設に泊まって介護を受けるサービスです。ご家族の出張や冠婚葬祭のときはもちろん、「介護を続けるために、少し休みたい」という理由で利用していただいて構いません。介護するご家族の休息(レスパイト)も、立派な利用目的です。
在宅での生活が難しくなってきた場合には、特別養護老人ホーム(原則要介護3以上)、介護老人保健施設、介護医療院といった施設への入所も選択肢になります。
4-4. 暮らしの環境を整えるサービス
このほか、介護ベッドや車いすなどの福祉用具のレンタル・購入費の支給、手すりの設置や段差の解消といった住宅改修費の補助(支給限度基準額20万円)もあります。転倒の予防は在宅生活の要ですので、こうした環境面の整備もぜひケアマネジャーにご相談ください。
4-5. 組み合わせは自由自在です
これらのサービスは、ひとつだけ選ぶものではありません。たとえば、医療的なケアが必要な方なら訪問看護と訪問介護を組み合わせて在宅生活を支える。家事の負担を減らしながら外出の機会も持ちたい方なら、訪問介護とデイサービスを組み合わせる。ご本人の状態とご家族の暮らしに合わせて最適な形を組み立てていくのが、ケアマネジャーの腕の見せどころです。
5. 利用が始まってからも、見直しはいつでもできます
ケアプランは、一度作ったら終わり、というものではありません。
ケアマネジャーは毎月ご自宅を訪ね、サービスが合っているか、体調や暮らしに変化はないかを確認します(これをモニタリングと呼びます)。その中で、状態やご希望の変化に合わせて、サービスの内容や回数を柔軟に調整していきます。
また、認定には有効期間がありますが、期間の途中でも、状態が大きく変わったときには区分変更申請ができます。たとえば認知症が進んで、今の要介護度の限度額では必要なサービスが収まらなくなった、という場合には、認定を取り直してサービスを増やすことが可能です。
サービスを使っていて「なんだか合わないな」「これでは足りないな」と感じたとき、あるいは事業所やヘルパーさんとの相性に悩んだとき——どうか我慢なさらず、ケアマネジャーにお話しください。言いにくければ、地域包括支援センターに相談していただいても構いません。介護は長いお付き合いになりますから、小さな違和感を放っておかないことが、良い関係を続ける秘訣です。
6. まとめ——迷ったら、まず「相談」から
長くなりましたので、最後に流れを整理しておきます。
- 地域包括支援センター・市役所・ケアマネジャーに相談する
- 要介護認定を申請する(代行してもらうこともできます)
- 認定調査を受け、主治医意見書が作成される
- 認定結果が届く(原則、申請から30日以内)
- ケアマネジャーとケアプランを作る(自己負担なし)
- サービス利用開始。以後も定期的に見直し
こうして並べると手続きが多く見えますが、ご本人やご家族が自力で進めなければならないのは、実は最初の「相談」だけです。そこから先は、地域包括支援センターやケアマネジャーといった専門職が、申請も、調査の立ち会いも、プラン作りも、ずっと伴走してくれます。
介護の悩みは、家庭の中だけで抱えていると、どんどん重くなっていきます。「こんなことを相談していいのだろうか」と思うようなことこそ、どうぞ窓口に持ち込んでください。私たちは、その一歩を心からお待ちしている立場の人間です。
私たち訪問看護ゆうは、伊勢市を拠点に、訪問看護と居宅介護支援(ケアマネジャー)の両方を行っている事業所です。
ケアマネジャーと看護師が同じ職場にいますので、「利用者さんの様子が最近少しおかしい」というとき、その場で医療の視点から確認し、対応できることが私たちの強みです。介護の相談と医療の相談を、別々の窓口に持ち込む必要はありません。24時間の連絡体制も整えており、夜間や休日の急な変化にも対応いたします。
伊勢市・松阪市・鳥羽市・度会郡・多気郡のエリアで、介護のこと、ご自宅での医療的なケアのことでお悩みでしたら、どうぞお気軽にご相談ください。電話が苦手な方は、ホームページのお問い合わせフォームからでも結構です。ご連絡を、お待ちしております。